アメリカでは通常、別居や離婚をした後でも、両親は子どもと一緒に過ごす権利(物理的親権)と、子どもに関する意思決定を行う権利(法的親権)を与えられます。子供の親権に関する規則は(他の家族法の問題と同様に)州によって大きく異なりますが、ほとんどの州の法律では、親権は最終的に子供の最善の利益に基づいて裁判官が決定することになっています。
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子供の最善の利益とは何か
親権や面会交流に関する両親の合意が明らかに不合理でない限り、両親で合意した内容を尊重することがほとんどで、別居や離婚など、親権が問題となる状況では、まず両親が腰を据えて合意に達することが多いです。裁判所は一般的に、親権争いを審理する前に、両親が互いに納得できる合意に達するよう交渉することを推奨しており、両親が合意できないと思われる場合には、紛争を和解調停に委ねることもあります。
合意に最終的な選択肢は裁判であるため、両親は交渉に臨む前に裁判官の典型的な会見を知っておくことが必要です。これは裁判官にとって非常に難しい問題であることが多いのですが、裁判所での判断には、一般的なパターンがあるので、注意しておくことが必要です。
まず、裁判官は、自己決定が難しい年齢の子供(例えば小学生児童など)に関しては、子供が自身で決断できるような年齢になるまでは、両方の親と一緒に時間を過ごせるように主張する傾向があります。一方で、高校生の子供が一方の親との同居を希望した場合には、裁判官はその希望を尊重するのが普通です。
裁判官は、たとえ親の能力や資質に疑問があったとしても、一方の親を子供との関係から排除することには、非常に消極的です。虐待があった場合でも、通常、監視付きの面会交流の権利が与えられます。監視付きの面会交流は、面会交流の専門家やその他の第三者の立ち合いのもとで行われます。また、裁判官は、可能な限り、兄弟を一緒にしておくなど、家族の結束を好む傾向もあります。
同時に裁判官は現状を維持しようと、偏りがちになることもあります。子供が特定の場所で、特定の親と長期間に渡って問題無く過ごしてきた場合、相手の親がその状況を変えるための議論を提示しても、裁判官はその状況を変えるのは消極的になる傾向があります。
物理的親権(親子で過ごす時間)
両親が非常に協力的であれば、今後は合意の上でスケジュールを組むだけで良いでしょう。しかし、ほとんどの場合、紛争のリスクを最小限に抑えるために、所定のスケジュールが必要となります。
最初に問題となるのが、平日(学校がある日の前夜)の子供の世話を誰がするかということです。多くの場合、これは片方の親が主に物理的な親権を持っています。しかし、両親の間でこの夜を分けることに合意することもあります。これは、両親が同じ地域に住んでいる場合に限られ、そうでない場合は通学が困難になります。半分ずつの共同親権の場合によくあるパターンとしては、子供が日曜日から火曜日の夜までを親Aと過ごし、水曜日から木曜日の夜を親Bと過ごし、金曜日と土曜日の夜を親Aと過ごし、日曜日から火曜日の夜を親Bと過ごすという「3・2・2・交互」のパターンがあります。
週末は交互に分けることが多いので、週末の間は両親が交代で子供を預かることになります。休日も同様に配分することができますが、単純に半分ずつにすることもできます。(例えば、一方の親がクリスマスイブを子供と過ごし、もう一方の親がクリスマスを子供と過ごすなど)
子供を送迎するための指定された交換場所があることが多く、それは親の自宅であったり、親の家の中の中立的な場所であったりします。
場合によっては、両親のどちらか、または両方が、過去の経歴や他の州や国とのつながりから、無断で子供を連れ去る明らかな危険性がある場合もあります。このような場合、裁判所は親権命令において、子の誘拐を防ぐために、州や国への外への旅行に許可を必要としたり、親が子供のパスポートを申請できないようにしたり、命令を別の管轄区域で登録することを要求したり、外国の公使館に命令を通知するなど、追加の制限を課すことができます。
法的親権(意思決定権)
裁判所の命令がない限り、一般的にはどちらの親も子供に関する意思決定権を持っています。現在、ほとんどの裁判所は、両親が主要な決定を下すために協力できると判断された場合は、共同の法的親権を与えることを好む傾向にあります。これが現実的ではないと思われる場合、裁判所は多、一方の親に単独の法的親権を与えます。別居または離婚後の共同法的親権の取り決めでは、通常、以下のような主要な決定事項について両親が話し合い、合意する必要があります。
- どの学校に通うか
- 課外活動
- 医療行為
- 宗教活動
- 他の州や国への旅行
- 子供の名前変更
- 子供に別の名前を使用させること
両親が協力して重要な決断を下すことが難しい場合、裁判所は一方の親に単独の法的親権を与えます。この2つの中間的な方法として、裁判所によっては、両親が特定の事項について合意できない場合に、一方の親に「タイブレーカー」の権限を与える方法で共同親権を認めることもあり、これらの事項が少なくとも両親の間で話し合われるようにしています。
親権合意と親権命令
両親が子供の親権について合意に達すると、多くの場合、その条件を書面にして署名した親権合意書に記録します。親権合意書は、財産やサポートの問題を扱う広範な夫婦間の和解契約の一部であるか、または独立した別の文書であるか、両方のパターンが考えられます。場合によっては、両親の合意に基づいて裁判官が裁判所の命令を出す方が有益なこともあります。裁判所の命令に違反した場合は、法廷侮辱罪に問われ、罰金や懲役を含む刑事罰が科せられることがあります。これにより、命令は合意よりも強力なものとなります。しかし、命令を変更するには、変更内容を裁判所に提出して、承認を得る必要があり時間と費用がかかる追加のプロセスが必要です。
親権合意書、親権命令はまた、裁判所への要求さえ行えばどちらの当事者によっても変更することができます。裁判官は、生活条件が子供の最善の利益になるように変化した場合、親権合意書と親権命令を変更することもあります。例えば、親が移転、転職したり、または子供の世話をする能力に影響を与えるその他の個人的な問題を持っている場合、または既存の合意または命令の条件に従う能力に変化があった場合などが考えられます。
著者:ダニエル・ジョセフ(ジョー)ジョーンズ
ワシントンD.C.とニューヨークに拠点を持つジョーンズ法律事務所の代表弁護士。米国移民法、国際親族案件、国際ビジネス案件を中心に活動しています。日本の大手企業や国際法律事務所で国際法務に従事した経験があり、日本語も堪能。お気軽にご相談ください。