多くのビジネスディスカッションは、秘密保持契約書(Non-Disclosure Agreement・NDA)の署名から始まります。秘密保持契約書には様々な種類があり、無料ウェブサイトや有料プロバイダー等に様々なひな型があります。ただし、全ての秘密保持契約が同等に作られているとは限りません。契約書のフォームを完全に理解せずに使用している場合は、ビジネスを危険に晒しているかもしれません。
一部ではありますが、秘密保持契約書ごとに異なる点を挙げて説明します。これらの点は契約の影響に良くも悪くも、大きな違いをもたらす可能性があります。
一方的なものと双方的なもの
最も基本的な相違点の1つに、誰が秘密保持義務を負うのかという事があります。秘密保持契約書の中には、「一方性」(One-Way)のものもあり、当事者の一方のみが秘密保持義務を負います。このタイプは一般的にベンダー、コンサルタント、投資家等に限られた情報を共有するときに理想的です。というのも、開示する関係者が見返りに情報を提供することが許されるからです。他には「双方向」(Two-Way)、「相互」(Mutual)、又は「交互」(Reciprocal)と言われる、両当事者が秘密保持義務を負う契約もあります。このタイプのものは一般に、業務提携等の共同事業に関する議論が行われる時に適しています。
機密情報の定義の範囲
一部のNDAは「機密」と明示された情報にのみ適用されますが、違うタイプのNDAだと、「機密」として明示されているかどうか関係なく、広範な技術及び商業情報に適用されます。どのアプローチがベストかについては、交換される情報の内容、使用等の状況によって異なりますので、契約ごとに検討すべきです。
関連当事者への情報開示
時には、コンサルタント、投資家、子会社や関連会社と機密情報を共有する正当な理由がある場合があります。優れたNDAの場合は、機密情報に対する適切なレベルの保護を維持しながら、情報の開示が必要になる場合も考慮に入れてあります。
有効期間
NDAは時折、情報が公共に晒されるまで機密のままである様にする為に、無期限である事があります。通常、ほとんどすべての機密情報が最終的に「古くなる」ため、期限を設定することは、より商業的に望ましくなります。また、保護された機密情報を交換できる期間を限定することが重要な場合もあります。こうしなければ、数年または数十年後に行われる議論に契約が適用され、混乱となる場合があります。
従業員の引き抜き禁止条項 (Non-Solicitation)
NDAは、多くの場合、特に厳密な技術・商業情報が関係している場合、議論を通じて相手に機密を漏らす可能性のあるスタッフの勧誘を禁止するのに適しています。非勧誘条項はすべてのNDAに存在するわけではなく、慎重に調整されない限り受け入れられないことがよくあります。
口頭契約の排除
NDAは、当事者間の決定的な取引には書面による合意が必要であることを明記した条項を含めることにより、ビジネス関係に関する紛争を回避するためにも使用できます。これにより、当事者間で書面による合意(パートナーシップや売買契約など)が存在することを後で主張されることを防ぐことができます。
海外における施行
NDAの相手方が外国に拠点を置く場合、秘密保持義務が海外でも有効になるかどうかを検討することが重要です。この場合、準拠法および管轄権条項は非常に重要になります。例えば、ニューヨーク州法に基づくニューヨーク州裁判所の判決は、ニューヨークまたはロサンゼルスでは簡単に執行できますが、北京では完全に執行できないからです。
技術的なセーフガード
NDAで秘密保持義務を明記する事は、情報の機密性を保護する唯一の方法ではありません。最も機密性の高い種類の情報については、特定の個人のみがアクセスできる物理的または仮想的な「クリーンルーム」など、望ましくない開示を防ぐための技術的な保護手段を検討すべきです。