コロンビア特別区(ワシントンD C)での離婚訴訟は、上級裁判所(Superior Court)によって処理されます。
アメリカにおける離婚関連の法律は州ごとに大きく異なります。配偶者が別の州に住んでいる、または、別の州に移動することが可能な場合は、それぞれの州の裁判所で離婚訴訟を起こした場合にどのような結果が予測されるかを事前に比較してから訴訟を行うことがお勧めです。ワシントンD Cに住んでいる方にとって最も考慮するべき州はメリーランド州とバージニア州です。
当事務所ではメリーランド州、バージニア州、コロンビア特別区、ニューヨーク州においての家族法の相談を受け付けております。ご相談の予約はこちらのフォームから行って頂けます。
必要条件
ワシントンDCで離婚訴訟を起こすには、以下の条件があります。
- 配偶者のどちらかがワシントンD Cに最低でも6ヶ月継続的に住んでいたという記録があることです。
- 配偶者が別居しているということです。これには、当事者が夫婦関係を持たない限り、同じ家の中で別々の寝室で寝ているということも含まれます。
- 離婚を申請するには、離婚の申請が相互的かつ自発的である場合は別居が最低でも6ヶ月以上、相互的でも自発的でない離婚の場合は最低でも1年以上別居状態が続いていなくてはなりません。
別居をしているが、離婚の時間要件を満たしていない場合は、法的な別居として、財産、扶養手当、また子供の親権に関する問題を事前に解決することはできますが、正式な離婚はできません。必要な別居時間さえ経過した後であれば、法的別居の判決を拡大して正式な離婚判決を受けることができます。
これらのワシントンD Cでの離婚に必要とされる条件に満たない場合は、もう一方の配偶者が居住する州での離婚申請が可能かもしれません。メリーランド州では、事前の別居期間が無くても相互の同意によって絶対的な離婚が許可されています。また、メリーランド州とヴァージニア州の両方で、不倫や残酷な行為が認められる場合は、即時的に離婚が認められます。しかし、それぞれの州では独自の居住要件があり、離婚の申請をする前に居住要件を満たしているかどうか確認する必要があります。
当事者の合意による離婚
平和的な協議離婚として離婚を成立させる場合は、両当事者が養育、扶養手当、または財産分与に関する全ての問題を解決することが必要です。つまり、扶養をどのように行うのか、各当事者にどれほどの金銭的責任が課されるかなどといったことに両者が完全に合意していなくてはなりません。これは通常、書面による和解契約を通して行われます。協議離婚の場合には、離婚の申請が処理されてから約1、2ヶ月後に上級裁判所で聴聞会が行われます。養育費が問題となる場合は、当事者間で合意された額がワシントンD Cで定められている条件を満たしているかを証明することが必要になります。
両者が離婚における条件について合意に至らない場合
このような場合の離婚プロセスは、一般的に次の通りです。
- 原告が上級裁判所に告訴を申し立てる。
- 裁判所が、告訴の受理をしてから45から60日以内に最初の審理の日程を設定。
- 原告が、60日以内に被告から受け取った召喚状、告訴、及び最初の聴聞会への返答を行う。被告がアメリカ国外に住んでいる場合などは、返答期限の延長がされる場合もあります。
- 被告は、書類の送付が行われてから21日以内に、原告の主張に賛成するか反対するかの返答をする。
- 最初の審理では、残りの審理日程と証拠開示期限が設定されます。当事者間の意見の不一致の範囲によっては、裁判所が裁判外紛争解決や子育てのクラスへの出席を命じることもあります 。
- 当事者間で、質問書、文書、証言録取、または承諾の要求を行います 。
- この時点で合意が認められない問題点は、陪審員無しで、裁判官の前で解決されます。これは通常、告訴から6〜9ヶ月以内に行われることがほとんどです。子供の親権と金銭問題において紛争がある場合は、裁判が別々の2つの裁判に分かれて行われます。その場合は、最初に子供の親権に関する裁判が行われ、それから3ヶ月後に金銭問題を解決するための裁判が行われます。離婚訴訟は提出から1年以内に解決されることがほとんどです 。
このプロセスの途中で、当事者が合意に達した場合、訴訟は協議離婚として処理されます。
親権
ワシントンD Cでは、法的な親権(意思決定権)と物理的親権(子供の保護観察を行う権利)が別々の概念としてみなされ、原則として共同親権が認められます。つまり、一方の配偶者が単独的な親権を要求したい場合は、それが適切であると示す証拠を提示するという追加の負担が課されるのです。これは、メリーランド州やバージニア州には存在しない概念なので、単独親権を求める場合はメリーランドまたはバージニア州で告訴を起こした方が有利でしょう。
養育費
他のほとんどの米国の管轄区域と同様にワシントンD Cでは、親権の状況、両親の収入や子供のニーズに応じて養育費を決める際のガイドラインが設けてあります。養育費は、子供が21歳になるまで、または両親からの法的独立が認められるまで(結婚、または経済的な自立)支払われます。当事者の支払い能力に変化があった場合などは、それに応じて養育費の額も変更になる場合があります。
ワシントンD Cは、近隣の州と比べても比較的に長期的、また高額な養育費の設定をしています。バージニア州とメリーランド州はどちらも、子供が18歳になった時点、または高校を卒業した時点で養育費の支払い義務を終了しています。メリーランド州でのガイドラインはワシントンD Cとほとんど同額ですが、バージニア州のガイドラインは遥かに少なく、ワシントンD C やメリーランド州と比べて半分以上減額になる可能性があります。
扶養料(アリモニー)
「アリモニー」とは、離婚後の配偶者の支援のために必要とされる追加の経済的支援のことを言います。これは、日本の「慰謝料」のように、不正行為をしている配偶者からの「罰」または「補償」として誤って認識されることが多いですが、それは間違った認識であり、通常、受け取る配偶者の経済的ニーズに基づいて決められます。
他のほとんどの州と同様に、ワシントンD Cには扶養料に関する正式なガイドラインは存在しません。扶養料の額は裁判官の裁量によって決定されるため、ケースバイケースであることがほとんどです。扶養手当を要求するには、現在の収入、潜在的な収入、その潜在的な収入を確保するために必要な手段、及び特別な支援が必要になる場合はその理由について説明する必要があります。
夫婦間の財産
離婚後、配偶者は、結婚前に自分の名義で獲得した、または結婚中に他人から受け取った贈り物、遺産、アイデア、または子孫として親族から遺産を受け取った場合などを個人の財産として保持することができます。他の全ての財産は、たとえ別々の名義で取得されていても、公平に分割されるべき夫婦の財産としてみなされます。共同名義で所有している財産は全て夫婦間の財産として扱われます。結婚中に得られた退職手当も一般的に、夫婦間の財産として扱われます。離婚手続き中も含め、離婚が正式に確定するまで、夫婦間の財産は蓄積され続けます。
メリーランド州とバージニア州では、夫婦の財産を検討する際には法的な所有権は考慮されません。また、メリーランド州では、原則としてワシントンD Cのように離婚が正式に処理された時点で夫婦間財産の蓄積が終了しますが、バージニア州では別居時点で夫婦間財産の蓄積が終了します。
当事務所での弁護士費用について
離婚紛争はケースごとに大きく異なります。迅速かつ簡単に解決する場合もあれば、解決するまでに多大な弁護士の努力が必要な場合もあります。
当事務所では、基本的に、訴訟が継続中の間は毎月2,000ドルの弁護士費用を見積もることをお勧めしています。未成年の子供がおり、裁判に至る以前に解決可能な金銭的問題を伴う、いわゆる典型的な離婚紛争の場合は、通常6ヶ月から8ヶ月かかり、およそ8,000から12,000ドルの出費が想定されます。しかし、もっと複雑な離婚紛争の場合は、9ヶ月から12ヶ月の間に20,000から25,000ドルかかることもあるのです。
一方の配偶者が弁護士費用の支払いを行うことができない場合は、もう一方の配偶者に支払い能力があると判断されるときのみ、裁判所を通して訴訟金の支払いを要求するか、弁護士費用の一部を判決後の収益から差し引いてもらうことが可能です。
著者:ダニエル・ジョセフ(ジョー)ジョーンズ
ワシントンD.C.とニューヨークに拠点を持つジョーンズ法律事務所の代表弁護士。米国移民法、国際親族案件、国際ビジネス案件を中心に活動しています。日本の大手企業や国際法律事務所で国際法務に従事した経験があり、日本語も堪能。お気軽にご相談ください。