国際契約書における「違約金・ペナルティ」と「予定損害賠償」

英米の契約法は通常、契約条件を尊重しますが、常にそうとは限りません。見落とされがちな落とし穴の1つには、契約上の「ペナルティ」の施行を強制できないことがあります。この落とし穴のせいで、「予定損害賠償」(Liquidated Damages)の概念が生まれました。これは、違反が発生した場合に当事者が被ると予想される損害賠償について予め定めておくことを意味します。

アメリカ州法における予定損害賠償

高額な取引の管轄法としてよく使われるニューヨーク州法では、予定損害賠償が実行不可能な場合が多く、判例を見る限り、ニューヨーク州の裁判所では実際の損害額より大きい予定損害賠償は認められないことがほとんどです。例えば、賃貸契約の違反の場合に一定額の予定損害賠償を定めることは、違反のタイミングと本質によって損害が大きく異なるので、認められない可能性が高いです。実際の損害に加えて課される予定損害賠償額も場合によって大きく異なります。

つまり、予定損害賠償は「実際の損害の額や影響を予測また証明することが難しいが、合理的な方法でおおよその損害を計算することが可能な場合」に最も適しています。例えば、商品の配達不能による予定損害賠償は通常、予定されていた商品の数量と、契約価格と市場価格の差(各当事者のカバーコスト)、また遅れの長さによって見積もりを計算することができます。

アメリカ統一商事法典における予定損害賠償

米国の州法に準拠する商品の販売契約には、アメリカ統一商事法典(UCC)が適用されます。UCC第2-718(1)条によると、取引における予定損害賠償は、「実際に起きた違反、または予測される違反によって引き起こされる損害や損失の証明の難しさ、事態の深刻さ、または実行不可能性や、他の手段で救済を得ることができないことなどを考慮した結果、合理的だと判断される額のみ」と定められています。また、「不当に大きな予定損害賠償を含む取引は、罰則として無効になる」とも示されています。また、UCC第2A-504条では契約の並行規則として、「契約違反やまたはその他の作為や不作為によって実際に引き起こされた、または予測される損害を考慮して合理的な金額のみ」が予定損害賠償の適切な額として示されています。

他の国での損害賠償

英語圏のほとんどの国の契約法は、イングランドのコモンローを適用しており、契約上の罰則に関する制限も似たようなものとなっております。しかし同じルーツと言えど、細かい制約は国によって違います。20世紀のほとんどの間、イングランド法では、予定損害賠償の額が実際の損失の「事前の見積もり」であることが要求されてきましたが、イングランドの最高裁判所は2015年に、この規則の範囲を狭め、しっかりとした定義を提供しました。少なくとも、同等の当事者の間では、贅沢または良心的でない限り、予定損害賠償条項は認められるという判決でした。このアプローチはシンガポールや香港などの他のコモンロー法域では拒否されました。どちらの国も、以前の英国の規則に従い続けています。

英語圏以外の多くの国では、契約上の罰則についての同様の制限はありません。例えば、日本では、違反が認められた場合には、固定または最低責任額として違約金が発生する事は非常に一般的であり、多くの場合、契約額の20〜50%になります。このような違約金は、公序良俗を反するなど不正がない限りは、一般的に認められています。

取引において準拠法が重要なのは、このような国によっての予定損害賠償に関する法整備の違いがあるためです。

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