ウィルス・地震・ハリケーン。このような場合、企業間の供給契約にはどのような影響が出るのでしょうか?残念ながら、法律での保護はほぼ役に立たない事が多いのです。
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商品の供給契約について、アメリカのほとんどの州では統一商法(UCC)第2‐615条に基づき、「契約に基づく、想定されないような偶発的な事態が発生したために合意された履行が実行不可能になった場合」は、売り手が配達を遅らせるか、キャンセルする事が可能と認められています。しかし、パフォーマンスの実行不可を主張するのは現実的に難しいという側面があります。
パフォーマンスの実行可能性は、予測不可能な「ブラックスワン」事例にも明確に当てはまるようです。例えば、飛行機が倉庫に墜落する事は、契約を提携する際には想定されていないものです。気象災害は特に複雑です。例えば、米国の湾岸と大西洋岸はハリケーンが頻繁に発生することで知られているので、ヒューストンまたはマイアミから製品供給の契約をする時は、ハリケーンのリスクを考慮するべきであったと顧客が主張しかねません。
未だに供給契約が、供給責任が免除される偶発事象の長いリストと非常に詳細な不可抗力条項を含んでいるのは、このような法律の抜け目が原因と考えられます。そのため、供給関係を結ぶ際には、販売者と購入者の両方が慎重に検討する事が重要になってきます。
第一に、「誰」と「何」が保護されるのかという事を考えなくてはなりません。UCCによる保護は通常売り手のためだけのものですが、買い手も不可抗力条項を行使する必要があるかもしれません。例えば、洪水によって唯一の倉庫へのアクセスが遮断された場合などがこれに当てはまります。UCCによる保護は商品の配送に限定されますが、その他の配送以外の業務も偶発的な事態の影響を受ける可能性があります。しかし一方で、金銭の支払いなどの業務は非常に重要なため、各当事者がそれらを確実に実行するように強制される事もあります。
次に、上記のような規制強化策だけでなく、緩和策も検討される必要があります。理想的には、予期せぬ災害・事態の場合には、両当事者がバックアップ機器の設置、保険への介入、及びその他の常識的な戦略によって、影響を軽減する為の努力をするべきです。
積極的な契約起草者は、契約の本文に、予期せぬ災害・事態の場合には取引相手が緩和策を取らねばならないという条項を入れると良いでしょう。他のアプローチとして、不可抗力条項から特定のリスクを除外する方法があります。原材料が入手不可能ということを主張する事が認められない場合は、供給主は継続的な供給を確保するための備蓄または緊急対応策を絞り出さなければなりません。お互いを支援するための正式な手段を明確にするため、当事者間の緊急事態へのフォーマルな対応策・役割を明確にしておく事が役に立つ事もあるでしょう。
次に、サプライチェーン内での仲介者・仲介業者は、サプライチェーン上流にいる供給者の不可抗力条項の宣言(または契約違反行為)が下流の顧客にどのような影響を与えるかを検討する必要があります。多くの場合、契約では上流または下流への不可抗力事象の影響について明確に言及または考慮されていません。顧客との契約内容によっては、供給者が法外な遅延を起こしたとしても、仲介人は時間通りに製品を納品する責任を負わされる可能性があります。買い手も売り手も、不可抗力事項によるコスト増加の影響を考慮する必要があります。ほとんどの不可抗力事項はパフォーマンスのタイミングのみに影響し、コスト増加などの影響は保護されません。
最後に、契約を超えて、全ての企業は、契約上の業務に照らして不可抗力事象への対応を管理する方法を検討する必要があります。多くの場合、取引先と連絡を取り、緊急事態の影響と、緊急事象の前後に行われた両当事者による緩和の取り組みの証拠を収集して維持する事が重要です。これは、契約クレームの違反を未然に防ぐのに役立ち、更に重要な事として、両当事者が困難な時期を通して供給者と顧客の関係を維持するのにも役立ちます。