アメリカ人が外国籍の配偶者をアメリカに連れてくるには、いくつかの方法があります。しかし、どの方法をとっても、他国のプロセスと比べて、アメリカへの移住はとても費用が高く、時間もかかるため、きちんとプロセスを理解し、計画を立てることが重要です。
当事務所ではメリーランド州、コロンビア特別区、ニューヨーク州においての家族法の相談をはじめ、移民関係の法律相談を世界中から受け付けております。ご相談の予約はこちらのフォームから行って頂けます。
基本条件
外国籍の配偶者のグリーンカードをスポンサーするためには、アメリカ人または永住権保持者である配偶者が次の条件を満たす必要があります。
- 世帯所得が連邦貧困ガイドラインの125%以上であること(アメリカ人または永住権保持者である配偶者が軍人の場合は、100%)
- グリーンカード申請者がアメリカに入国した後、一定期間、金銭的な支援を行うことに同意すること。この義務は、配偶者との別居、離婚、または破産後であっても、生涯にわたって続く可能性があるため、それを理解した上で同意することが重要です。詳しくはこちらの記事をご覧下さい。
- 未成年に対する特定の犯罪歴(誘拐、児童ポルノの所持、およびその他の性犯罪を含む)が無いこと。また、犯罪歴がある場合は、受益者への脅威では無いということを証明する免除書類をアメリカ合衆国国土安全保障省から取得しなくてはなりません。
婚約者(K-1)ビザ
これは一般的に、夫婦がまだ結婚していないが、アメリカで結婚する予定がある場合に使用されます。このビザの場合、外国籍の婚約者がアメリカに移住するまで、数カ月待つ必要があり、またさらにその後、外国籍の配偶者が働いたり、国外旅行に行けるようになるまで数カ月待たなくてはなりません。
- I-129F fiancé petition を提出。処理には4~6か月かかります。(2019年9月時点での待ち時間)
- 外国籍である配偶者の出身国の大使館または領事館にDS-160ビザ申請書を提出。
- ビザは面接後すぐに発行され、3カ月以内にアメリカに入国できます。
- 夫婦は、外国籍の配偶者が入国してから90日以内に結婚する必要があります。
- 結婚後、I-485移民ステータス調整申請書(AOS)を提出。これは処理に1~2年かかる場合があります(2019年9月時点での待ち時間)
外国籍の配偶者がグリーンカードを待っている間に仕事や旅行をしたい場合は、I-485を提出するときに同時に、I-765雇用許可申請(EAD)を提出。これは基本的に迅速に発行されますが、処理に数か月かかる場合もあります。
グリーンカードは通常、I-485移民ステータス調整申請書(AOS)の処理完了時に発行されます。これにはおよそ1~2年かかります。この間、外国籍の配偶者には、以下でもっと詳しく説明されますが、「条件付き永住権」というものが支給されます。
配偶者(CR-1/IR-1)ビザ
これは一般的に、夫婦がすでに結婚している場合、またはアメリカ国外で結婚したい場合に使用されます。これは、外国籍の配偶者が米国移民局の現地事務所がある国に住んでいる場合、または別の国で現地処理の資格がある場合に、配偶者をアメリカに連れてくるのに最も速い方法です。そうでないと、外国籍の配偶者がアメリカに移住するまでに1年以上待つ必要があります。これの利点の1つに、配偶者がアメリカに入国するとすぐに永住権が与えられ、すぐに就労が可能になるということがあります。
外国籍の配偶者が中国、エルサルバドル、グアテマラ、インド、またはメキシコにいる場合
これらの国には米国移民局の現地事務所があるため、比較的迅速に書類処理が可能です。
- 地元の大使館・領事館にI-130移民請願書を提出。
- それが承認されたら、大使館・領事館にビザ申請を提出
- それが承認されたら、大使館・領事館で面接の予約を取ります。ビザは面接直後に発行され、3カ月以内に入国できます。
外国籍の配偶者は、ビザを使っての入国と同時に永住者となります。(承認されたビザは、最長1年間の一時的な身分証明として機能しますが、グリーンカードは入国後数週間で登録されている住所に郵送されます)
上記以外の国にいる場合
上記以外の国いる場合、書類処理のほとんどがアメリカ本土の比較的対応の遅いセンターで行われるため、これらの国では通常、時間がかかります。
- アメリカ国内でI-130移民請願書を提出。
- 数か月後、I-130が承認されたら、ナショナルビザセンターに照会され、申請者はそこでビザ申請を行うことになります。
- 審査後、ナショナルビザセンターから外国籍の配偶者のいる国の大使館または領事館にビザ申請書が送付され、申請者はそこで面接を受けることになります。
- ビザは面接後すぐに発行され、発行から3か月以内の入国に限り有効です。
外国籍の配偶者は、このビザで入国した時点で永住者になります。承認されたビザは、最長1年間の一時的な永住権証明として機能しますが、グリーンカードは入国後数週間で登録されている住所に郵送されます。
現地に米国移民局の事務所が無くても、外国籍の配偶者がいる大使館や領事館でのI-130の手続きをすることができる場合もあります。これにより、待ち時間を数か月短縮することができます。この特別待遇は、米国外の基地にいる活動的な軍人の配偶者や急な仕事の依頼など、特定の「例外的な状況」とみなされる場合に利用することができます。
外国籍の配偶者と海外で一緒に暮らしているアメリカ人は、現在アメリカに移住する意思が無くても、I-130移民申請書を提出することが可能です。それが承認されると、棚で保管され、後に夫婦がアメリカに移住することを決めた場合に、直接ビザ申請に進むことができるので、待ち時間を短縮できます。
移民ステータスの調整(Adjustment of Status)
これは、外国籍の配偶者がすでに他の種類のビザでアメリカに滞在している場合の方法です。これは以下の手順で行われます。
- I-130移民申請書、I-485資格変更申請書(AOS)、I-765雇用許可証(EAD)申請書を補助書類と一緒に提出。
- 申請後、配偶者は米国移民局が指定するセンターで指紋と写真(バイオメトリクス認証)を取るための予約を取ります。
- 申請から最短で5か月後には、結婚詐欺でないかどうか確認するための面接が行われます。この面接をパスすれば、その後すぐにグリーンカードが発行されます。
I-765雇用許可証(EAD)の発行には通常数か月かかりますので、移民ステータスの調整(AOS)の手続きが比較的早かった場合、EADの発行はグリーンカードの発行と同時期になる可能性があります。しかし、AOSの処理が大幅に遅れた場合、EADがあれば、グリーンカードが保留されている間、外国籍の配偶者の就労とアメリカへの再入国が可能になります。
B-1/B-2訪問者ビザやF-1学生ビザなどの非移民ビザからステータスを調整する場合や、ESTAによるビザ免除プログラムで米国に滞在している場合は、特別に注意する必要があります。というのも、これらのビザ保持者がアメリカ人と結婚し、到着後90日以内に同居した場合は、ビザを申請した時と米国に入国した時に、故意に移民の意思を偽ったと推定されるからです。しかし、1980年代初頭の判例では、市民や永住権保持者の配偶者に居住権を与えないことは不公平であり、その不公平さの方が移民が意思を偽ったことより、上回ると判断されています。
現在のオーバーステイを解消して、結婚に基づくステータスの調整をすることも可能であり、これについてはこちらの記事で詳しく説明しております。
条件付き永住権
外国籍である配偶者が結婚後2年以内に永住権を取得(AOS、またはCR-1ビザでの入国などにより)した場合、2年間のみ有効な「条件付き永住権」が与えられます。条件付き永住権が失効する90日以内に、外国籍の配偶者とアメリカ人の配偶者は共同でI-751という書類を提出する必要があり、それによって条件が免除され、完全な永住権を取得することができます。これは、結婚が正当なものであるかを確認するための措置です。I-751を提出しない場合は、外国籍の配偶者が退去を命じられることもあります。
死亡、離婚、婚姻の無効判決、または、家庭内暴力の場合は、外国籍の配偶者が単独で永住権を申請することもできますが、婚姻の正当性を証明するための負担が大きくなることもあります。グリーンカードと離婚についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。
著者:ダニエル・ジョセフ(ジョー)ジョーンズ
ワシントンD.C.とニューヨークに拠点を持つジョーンズ法律事務所の代表弁護士。米国移民法、国際親族案件、国際ビジネス案件を中心に活動しています。日本の大手企業や国際法律事務所で国際法務に従事した経験があり、日本語も堪能。お気軽にご相談ください。