意図的又は意図せずに、外国人がビザで認められた期間以上米国に滞在する事(オーバーステイ・不法滞在)は、よくある事態です。幸運な事に、オーバーステイしたからといって米国における生活が必ずしも終わるわけではありません。オーバーステイをしてしまった後でも、合法的に米国に滞在し続ける方法はいくつかあります。
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滞在期間に注意
混乱しやすい点の1つに、ビザの種類によって滞在期間が違うという事があります。非移民ビザで米国に滞在している方は特に、パスポートのスタンプに示されている日付、又は、I-94に示されている日付に注意しなければなりません。
ビザを取得して米国に滞在している方への注意点としては、ビザが有効である期間と許可される滞在期間が違うという事があります。例えば、E-1・E-2ビザの場合、ビザ自体は2年間有効ですが、実際に合法的に米国に滞在できる期間は1年以下という事もあるのです。同様に、B-1・B-2ビザの場合は原則10年間有効ですが、認められた滞在期間は1年以下という事もあり得るのです。
オーバーステイ後の再入国
オーバーステイ後に任意的に米国を出国し、再度米国への入国を試みる場合はもう一度ビザを取り直さなければなりません。オーバーステイをしてしまった場合、その時点で取得しているビザは無効になります。
過去にオーバーステイの記録があると、ESTA(ビザ免除プログラム)の利用が不可能になります。ESTA参加国の国籍があっても、米国に再入国する際はビザが必要になります。
他の法的罰則は、オーバーステイの期間と強制送還がなされたかどうかによって変わってきます。
- 180日以下のオーバーステイの場合、領事館担当者に新しいビザを再申請した時に拒否されてしまう可能性が高くなります。というのも、過去にオーバーステイをしているので、新しいビザを貰っても、またビザの条件を守らずオーバーイをするのでは無いかと信頼が疑われるからです。
- 180日以上のオーバーステイの場合、個人が任意的に米国を出国した日付から3年間、米国への再入国が原則として禁止されてしまいます。
- 1年間以上のオーバーステイの場合、個人が任意的に米国を出国した日付から10年間、米国への再入国が原則として禁止されてしまいます。
- 日数に関わらず、米国でのオーバーステイは強制送還の理由になり兼ねません。強制送還をされた場合は、米国への再入国が「永久」に禁止されてしまいます。こういった「永久再入国禁止」は、1年間以上の不法滞在があり、その後適切な検査無しで米国に再入国しようとする(つまり、違法に国境を越えようとする)個人にも適用されます。残念ながら、この様に永久追放を科されてしまった個人に利用できる恩赦や法的免除はほとんどありません。
3年間・10年間の再入国禁止が適用している間にB-1・B-2(短期滞在)、E-1・E-2(貿易・投資)などの非移民ビザを申請した場合、米国移民局が「人道的な目的」、「家庭の団結」、「公共の利益」の為になると判断した場合には、再入国禁止期間に関わらずビザを発行することがあります。また、移民ビザ・グリーンカードを申請した場合、米国市民またはグリーンカード所持者である配偶者または両親に人生を左右する様な困難が生じた場合、禁止期間に関わらずビザを発行することがあります。しかし、オーバーステイによる永久再入国禁止を科されている場合は、これらの方法は使えません。
再入国禁止期間は、個人が一旦米国を離れていた場合にのみ適用されます。そのため、長期にオーバーステイをしてしまった人たちは難しい選択に直面しなければなりません。①「強制送還を恐れながらそのまま米国に滞在し続ける」か、②「合法的に米国に滞在できる権利を得る」か、③「自国に戻り再入国禁止時効が切れるまで待つ」か。
この中でも、②「合法的に米国に滞在できる権利を得る」方法について下記に詳しく掲載してあります。
オーバーステイ中に合法的に米国に滞在し続ける方法
限られた条件のもとではありますが、オーバーステイ中であっても合法的に永住権を取得できる方法があります。
- 米国市民の直属の親族(配偶者、子供、両親など)である場合―当事者が合法的に米国に入国した事が認められる限り、有効な在留資格がなくても米国に滞在できる権利が与えられます。
- 米国での雇用に基づくグリーンカード申請の場合―180日以下のオーバーステイまたは法的に認められていない雇用は黙認されます。
- DV(家庭内暴力)の被害者である場合―違法に米国に入国したとしても、米国への滞在は認められます。オーバーステイも日数に関わらず、罰則は免除されます。 詳しくは「DV被害者のためのVAWAグリーンカード」をご参照ください。
- 旧法に基づく移民申請の場合―2001年4月30日より前に提出された特定の移民請願の受益者は、現在違法移民と見なされている場合でも、在留資格を変更する事ができます。
- 米国移民局による裁量の場合―米国移民局が「人道的な目的」、「家庭の団結」、「公共の利益」の為になると判断した場合、再入国禁止令を解除される事があります。再入国禁止令が解除された後、合法的に米国に滞在する為にはI-690という書類を提出しなければなりません。この方法は、米国移民局に現在進行形のオーバーステイの通知が届いてしまうので、リスクの高い方法とも言えます。
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著者:ダニエル・ジョセフ(ジョー)ジョーンズ
ワシントンD.C.とニューヨークに拠点を持つジョーンズ法律事務所の代表弁護士。米国移民法、国際親族案件、国際ビジネス案件を中心に活動しています。日本の大手企業や国際法律事務所で国際法務に従事した経験があり、日本語も堪能。お気軽にご相談ください。