アメリカで1994年に制定されたViolent Crime Control and Law Enforcement Act、通称VAWA(Violence Against Women Act)は、家庭内暴力の被害者であるアメリカ市民や永住者の配偶者が、配偶者からのスポンサー無しでグリーンカードを申請できる制度を確立しました。
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VAWA自己請願は、家庭内暴力の被害者である男性と女性の両方が利用できます。また、アメリカ市民または永住権を持つ親によって虐待された子供の場合にも利用することができます。被害を受けた子供の場合、子供は自己請願することができ、またはその親(配偶者)は子供の虐待に基づいて自己請願することができ、請願書に子供を含むことができます。
虐待の定義
請願者は、配偶者または配偶者になろうという人から虐待を受けていたこと、または極度の残虐行為を受けていたことを証明しなければなりません。虐待の内容は、肉体的、性的、心理的、精神的なものの全てを含みますが、基準としては「暴行罪」(傷つける目的で相手に触れること)または「極度の残虐行為」のいずれかの基準を満たす必要があります。後者に該当するためには、非身体的な虐待が請願者の生活の質や通常に生活する能力に影響を与えている必要があり、例えば、請願者に恐怖心を抱かせるような脅迫などが挙げられます。よくある夫婦間の相性の悪さや喧嘩だけでは不十分です。
誠実な結婚と同棲
アメリカ市民または永住者との結婚は誠実な愛に基づくものでなくてはいけません。重婚(配偶者が既に他の人と結婚していること)により無効となった結婚も対象となりますが、アメリカへの移住のみを目的に結ばれた偽装結婚は対象となりません。USCISがどのように偽装結婚の見分けるかについては、「米国における「結婚詐欺」の危険信号」をご参照ください。
誠実な結婚であったという要件に加えて、当事者はある時点で同居していた事実がなくてはならず、その同居はアメリカ国内であったか、アメリカ市民または永住者である配偶者がアメリカ国外で米国政府や軍のために働いていた間でなければいけません。VAWA請願は、当事者の別居の以前、以後に関わらず提出ができます。
道徳的な人格
VAWA請願者は、道徳的な人格であることを示さなくてはいけません。この定義は、法的には寛大に解釈されていますが、犯罪歴、脱税、不倫、楽物乱用、移民手当を得るための虚偽の証言などがあると、請願者の人格の評価に影響を与える可能性が高くなります。しかし、このような不利な経歴があったとしても、それが虐待の状況に関係している場合は、免除されることがあります。(例えば、請願者が虐待者によって売春を強制された場合や、生き延びるために万引きを強要された場合など)
申請期限
VAWA請願は、配偶者の死亡、当事者の離婚、または配偶者がアメリカ市民権や永住権を失ってから2年以内に提出しなければなりません。しかし、当事者が虐待とは無関係の理由で離婚した場合には、離婚が有効となった後にVAWA請願を行うことはできません。
雇用許可証とグリーンカードの取得
ほとんどのVAWA請願者は、アメリカに滞在している間にグリーンカードを取得するために、特にアメリカ国内での法的な移民ステータスが無い場合に、移民ステータスの調整を行います。反対に、海外の大使館や領事館を通しての手続きは、既に法的地位を持つ請願者にとって最も望ましい方法です。これらの手続きのメリットとデメリットについては、「米国の「領事館手続き」(Consular Processing)と「ステータスの調整」(Adjustment of Status)」をご参照ください。
VAWAグリーンカードの優先順位は、配偶者のステータスによって変わってきます。アメリカ市民の配偶者は、すぐにステータスを調整したり、ビザを申請したりすることができますが、永住者の配偶者はF-2カテゴリーでビザの日付が有効になるまで待たなければなりませんが、申請のタイミングやバックログの量によってはそれ以上かかることもあります。
VAWA請願者は、通常、移民局からDeferred Actionを与えられ、グリーンカードを待つ間、アメリカで働くための労働許可証を申請することができます。この手続きは数ヶ月かかります。家族や雇用ベースのグリーンカード申請とは異なり、アメリカ国内のVAWA請願者は通常、ステータス調整を待つ間は、アメリカ国外へ旅行するためのアドバンスパロールを取得することはできません。
違法滞在またはオーバーステイしてしまった場合のVAWA申請
VAWAの主な目的は配偶者からグリーンカードのスポンサーを得られないDV被害者に法的居住権を提供することです。そのため、VAWAは、ビザやESTAのオーバーステイを含む、アメリカでの法的移民資格を持たない請願者でも利用できます。しかし、VAWA請願者は一般的にアドバンスパロールが利用できないため、申請が処理されている間は米国に滞在しなければならず、さもなければ再入国禁止の対象となる危険性があります。オーバーステイに関しては、「米国での「オーバーステイ」を乗り越える方法」をご参照ください。
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著者:ダニエル・ジョセフ(ジョー)ジョーンズ
ワシントンD.C.とニューヨークに拠点を持つジョーンズ法律事務所の代表弁護士。米国移民法、国際親族案件、国際ビジネス案件を中心に活動しています。日本の大手企業や国際法律事務所で国際法務に従事した経験があり、日本語も堪能。お気軽にご相談ください。