グリーンカード請願書(家族ベースの場合はI-130フォーム、雇用ベースの場合はI-140フォーム)が承認された後、合法的な永住権を取得するには二つの方法があります。ステータスの調整(Adjustment of Status)はアメリカ国内から行うプロセスで、アメリカ移民局を通して行います。領事館手続き(Consular Processing)は海外から行う手続きで、国務省を通じて行われます。これは、ナショナル・ビザ・センターによる一次審査の後、外国にある米国大使館または領事館で最終面接が行われます。
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領事館手続きは、通常、ステータスの調整よりも数カ月早いことが多いですが、待ち時間は、アメリカ移民局でのバックログ(未処理のまま溜まっている過去のアプリケーション)の量と、ナショナル・ビザ・センターや海外大使館・領事館でのバックログの多さに応じて大きく変動します。領事館手続きは、アメリカから海外への渡航費が追加で発生する場合がありますが、政府に支払うアプリケーション費用は安価に済みます。したがって、2つの選択肢から選ぶことが可能であれば、領事館手続きの方が有利なことが多いです。しかし、グリーンカード取得への戦略を立てるには、両方の選択肢を慎重に検討する必要があります。
領事館手続きの方が有利になる場合
- 申請者が海外にいて、アメリカに合法に入国する手段が無い場合
ステータスの調整には、通常、申請時にアメリカに合法的に滞在している必要があります。(ほとんどの場合、有効な非移民ビザがこれにあたります)これができない場合は、おそらく領事館手続きを選択し、アメリカ国外で待つことになります。 - 有効な非移民ビザを持ち、アメリカに合法的に滞在しているが、グリーンカードの発行を待つ間にアメリカと海外の行き来を続けたい場合
ステータスの変更を行うと、申請者は事前にAdvance Parole (AP)が出るまで、アメリカに滞在し続けなくてはなりません。APは、グリーンカード申請時と同時に申請が可能ですが、手続きに数カ月かかり、その間はアメリカ国内に滞在しなくてはなりません。この場合、領事館での手続きを利用すれば、この問題は回避できます。 - ステータスの調整を利用する資格が無い場合
特定の在留資格を持つ人には、ステータスの調整の利用資格が無いことがあります。例えば、ビザ免除プログラムを利用した旅行者、乗組員、特定の法律上または移民上の問題(密入国、違法な雇用など)が記録されている者などに当てはまる場合は、例外が適用されない限りはステータスの調整が利用不可能なので、アメリカ国外から領事館手続きを使ってグリーンカードを取得する必要があります。
ステータスの調整の方が有利になる場合
- アメリカでの滞在資格が失効していて、申請手続き中もアメリカに滞在し続けたい場合
これは、L-1やH-1Bなどの就労ビザのように、延長ができない非移民ビザを持つ人によく見られる状況です。ビザの有効期限が切れても、ステータス調整の手続きを待っている間は、合法的にアメリカに滞在することができます。領事館手続きを選択した場合には、これは不可能です。 - 申請手続き中に、本人または家族のアメリカでの雇用許可が必要な場合
多くの申請者は、グリーンカードの手続きを行う前に就労を許可するEmployment Authorization Document(EAD)を受け取ることができます。これは、就労制限のあるビザでアメリカに滞在している人には便利なオプションです。 - 健康診断やビザ面接のために自国に戻ることができない場合
特に申請者が遠い国や危険な国の出身であったり、医療や家族の事情で渡航できない場合には、海外渡航のコストとリスクが領事館手続きの利便さを上回ることがあります。 - 不法滞在の経歴がある場合
不法滞在をしてしまった場合、アメリカを離れると再入国が禁止されますが、アメリカ市民の近親者である場合や、VAWA(Violence Against Women Act)に基づいての申請である場合など、特定のケースではステータスの調整が認められています。この問題の詳細については、“米国での「オーバーステイ」を乗り越える方法”をご参照下さい。
著者:ダニエル・ジョセフ(ジョー)ジョーンズ
ワシントンD.C.とニューヨークに拠点を持つジョーンズ法律事務所の代表弁護士。米国移民法、国際親族案件、国際ビジネス案件を中心に活動しています。日本の大手企業や国際法律事務所で国際法務に従事した経験があり、日本語も堪能。お気軽にご相談ください。