将来移民としてのステータスを望む場合は、学生として米国に入国するのが一番簡単なやり方と言えるでしょう。しかし、学生ビザの豊富な種類や細かな法律は初心者には難しいかもしれません。この記事では、そんな学生ビザに関する基本的なルールを説明しようと思います。
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種類
米国での学生ビザには様々な種類があります。
- F-1ビザー高校生や大学生など
- J-1ビザー広範囲の大学院生、ポスドクフェロー、インターン、ワーキングホリデーなどの交流訪問者
- M-1ビザー職業・専門学生など
F-2、J-2、又はM-2のビザを使用すれば、学生であっても配偶者や子供を連れてくる事が可能です。また、カナダやメキシコから米国に通勤・通学する方であればF-3やM-3などのビザを使う事もできます。
一回のみのセミナーや、管理職教育プログラムなどの短期学習コースであればESTA(ビザ免除プログラム)またはB-1、B-2ビザでの入国が可能です。これらは学生ビザとしては認識されていないので、学生ビザに関するルールは適用されず、観光客やビジネス訪問者としてのルールが適用されます。
必要条件
学生ビザ申請者は移民になる意向が無いことを証明する必要があります。米国籍の配偶者がいるなど、米国で移民になる意向があるのではないかと疑われる場合は、ビザ申請が拒否される事もあります。学生ビザ申請者は学業に必要となる費用の支払い能力がある事を証明しないといけません。さらに、I-901という書類を提出する必要もあり、その書類の提出によりSEVISというデータベースにより請願者のビザステータスが追跡されます。
滞在期間
F-1、J-1ビザ保持者はI-20( F-1ビザ保持者用)又はDS-2019(J-1ビザ保持者用)という、ビザのスポンサーによって提供される書類において定められる期間(通常、各プログラムの継続期間)、米国に滞在する事ができます。一方、M-1ビザ保持者は定められた一定期間のみ滞在が許可されます。
しかし、例外的に実践的なトレーニングの為に初期に定められた滞在期間を延長する事ができます。この例外には、F-1保有者向けのオプショナルプラクティカルトレーニング(OPT)、J-1保有者向けのアカデミックトレーニング、M-1保有者向けのプラクティカルトレーニングなどが含まれます。
ビザの期間と実際のトレーニング期間が終了すると、F-1保有者には60日間、J-1およびM-1保有者には30日間の「帰国猶予期間」(Grace Period)が与えられます。この期間中は、ビザの条件に違反(不正雇用など)していない限り、米国にとどまる事ができますが、猶予期間が過ぎても米国に滞在している場合は、オーバーステイ (不法滞在)と見なされます。
ビザで認められた期間を超えて米国に滞在すると、再入国時に3年または10年の入国禁止令(bar on re-entry)が課される事があるので、これを避ける為にも、米国を直ちに出国し、新しいビザを取り直す必要があります。オーバーステイ によるペナルティに関しては、この記事で詳しく説明してあります。学生ビザで滞在中にオーバーステイ をしてしまった場合は、ご遠慮なく当事務所までご相談下さい。
雇用
F-1ビザの場合は、大学のキャンパス内であれば、政府からの承認無しで働く事が可能です。キャンパス外での雇用は、学業を始めてから1年以上が経過していて、学期中は週20時間まで、また米国移民局による許可が必要など、様々な条件が課されます。しかし、F-1ビザ保持者であれば、カリキュラープラクティカルトレーニング(Curricular Practical Training/CPT)という、学生が専攻しているプログラムの一環として通っている教育機関により認められた有給の企業研修に参加する事ができます。
卒業後は、オプショナルプラクティカルトレーニング(OPT)プログラムを使用して米国で働く事も可能です。OPTは通常は最長12カ月間ですが、STEM分野(Science, technology, engineering, and mathematics)での学位を保持している学生には最長36ヶ月間の滞在権が与えられます。
STEM分野のOPTを活用する多くの学生達はH-1Bビザ(高度な専門知識を要する職業用ビザ)を使ってOPT期間終了後も米国に滞在し続ける事が珍しくありません。STEM分野のOPT期間中にH-1Bビザ請願が承認された場合、「キャップギャップ」(cap gap)というルールにより、OPTの執行日とH-1Bビザ開始日にギャップがある場合でも、学生はH-1Bビザが有効になるまで、米国に滞在し、働き続けることができます。
J-1ビザの学生は、ビザの特定のサブカテゴリーとDS-2019という書類の条件に基づく雇用規制の対象となります。 J-1ビザの学生は通常、スポンサー先から報酬を受け取ることができ、学生向けの職業とアカデミックトレーニングを行うこともできます。短期大学や4年生大学の場合は、学期中も働く事はできますが、週20時間以下である事が条件になります。
M-1ビザの学生は、通常、就労することはできませんが、米国移民局によって承認をもってプラクティカルトレーニングに参加する事が可能です。プラクティカルトレーニングは修学期間毎4ヶ月ごとに1ヶ月与えられ、最大で6か月まで認められます。プラクティカルトレーニングの承認は、I-765という書類を提出することで要求できます。
不正雇用などの行為は、学生をout of status(不法滞在)状態に追い込んでしまう事があり、そうなると、3年や10年の再入国禁止令(B A R)を避けるためにも、一度米国を出て、新しいビザを取り直さなければなりません。学生としての法的なステータスを失うことには様々な影響があり、それについてはこちらの記事に詳しく書いてあります。オーバーステイ に関してご心配な方はどうぞご遠慮なく当事務所までご相談下さい。
学生ビザからの乗り換え
学生ビザ保持者は条件を満たす場合は、母国の雇用主を通してE-1又はE-2ビザに乗り換える方法や、高度な専門知識を有する職業者としてH-1Bに乗り換える方法、米国籍かグリーンカード保持者と結婚する方法など、他の移民ステータスに乗り換えて米国に滞在し続ける事も可能です。この様な場合は、米国内から在留資格を変更する(adjusting status)か、一度米国を出て国外から新しいビザを申請する”Consular Processing”という方法を使うかの2つの方法があります。米国外から申請をする方が国内からの申請よりも早く、簡単に手続きが済む場合も珍しくありません。
特定のJ-1ビザ保持者は、プログラム終了後に少なくとも2年間母国に滞在しないといけないという条件が課される場合もあります。医学生や、国外にスポンサーされているプログラムの学生、母国の発展に重要であると見なされるプログラムの学生はこの条件に当てはまる可能性があります。これに当てはまる学生は、移民ステータスの調整をする際に、母国からの承認が必要になるか、必要不可欠と見なされた場合のみに承認されるなど、様々な制限が課されます。
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著者:ダニエル・ジョセフ(ジョー)ジョーンズ
ワシントンD.C.とニューヨークに拠点を持つジョーンズ法律事務所の代表弁護士。米国移民法、国際親族案件、国際ビジネス案件を中心に活動しています。日本の大手企業や国際法律事務所で国際法務に従事した経験があり、日本語も堪能。お気軽にご相談ください。