米国永住権スポンサーの扶養宣誓供述書(Form I-864)における義務

家族ベースのグリーンカードをスポンサーとして後援した方は必ず、米国移民局(USCIS)にForm I-864において扶養宣誓供述書を提出する義務があります。これは、スポンサーと米国連邦政府間との拘束力のある契約であり、スポンサーはグリーンカード申請者に最低でも政府の貧困ガイドラインの125%相当の金銭的サポートを継続的に維持する必要があります。

これは、公的支援に依存する可能性のある移民の入国を防ぐために、1996年に行われた福祉改革の一環として実施されました。そのため、スポンサーにはグリーンカード申請者の金銭的支援という重い責任を課されてしまうのです。

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金銭的責任はどのくらい大きいのか

連邦政府の貧困ガイドラインの金額は毎年調整されており、特にアラスカとハワイでは米国本土48州よりも25%高く設定されています。2020年度版によると、125%とは、1人の世帯で年収15,950ドル、2人の世帯で年収21,550ドル、また3人の世帯で年収27,150ドルに相当します。

グリーンカード申請者が投資、銀行口座への利子、または外国の年金プログラムなどから独自の収入源がある場合は、それと連邦政府から要求される125%との差額分の金銭的支援が義務付けられます。

金銭的支援はいつまで続くのか

扶養義務は次のいずれかの条件が発生することによって終了します。

  1. グリーンカード申請者が米国市民として帰化するとき
  2. グリーンカード申請者がアメリカで長期間働いたため10年分以上の年金(ソーシャルセキュリティー)受給資格があるとき
  3. グリーンカード申請者が何らかの理由でアメリカを永久的に去るとき(※永住権は通常、移民が再入国許可証を持っていない限り、アメリカ外で一年以上過ごすと自動的に失効してしまいます)
  4. グリーンカード申請者が、強制送還からの救済措置として米国移民局から新しい在留資格を認められたとき
  5. グリーンカード申請者が亡くなったとき

たとえ離婚や別居をしたとしても、金銭的支援の義務は解消されません。また、スポンサーが自己破産を申請した場合であっても義務が取り消されることはありません。もし、移民である申請者が働かなかった場合は、金銭的負担が生涯続く可能性もあります。2012年の判例では、扶養者が雇用を探さなくても、スポンサーの金銭的負担が軽減しないと判断されました。

婚姻前合意や夫婦和解合意など、当事者間の合意によって義務を解消できるかどうかの判断についてはまた見解が確定していません。一部の裁判所及び国土安全保障省は、移民申請者には、通常の契約上の権利と同様に契約上の責任を放棄することができると判断しています。しかし、その他の裁判所は、扶養者と移民申請者の合意を政府の同意無しに解消することはできないと主張しているところもあります。

世帯規模はどのように計算されているのか

連邦法では、扶養者と移民申請者が別の世帯に住んでいる場合の法的義務については明確に示されていません。2016年の判例では、扶養者の義務は移民申請者の収入にのみ適用され、移民申請者の家族や扶養者は考慮されないと判断されました。

このルールを適用すると、例えば、アメリカ人のジョンが妻であるマリアのグリーンカードをスポンサーした後離婚し、マリアがチャドという別の男性と再婚した場合、ジョンは、チャドの所得に関係無く、マリアの個人所得が連邦政府の貧困ガイドラインを下回らないように金銭的援助をする義務があるのです。もし、ジョンがマリアの子供たちのグリーンカードもスポンサーしており、離婚後マリアが子供を引き取った場合は、子供たちもマリアの世帯の一部として数えられるので、ジョンには子供たちの分まで金銭的支援をする義務があり、より高額な支援が必要になる可能性があります。

金銭的義務はどのように施行されるのか

金銭的義務は、離婚や別居などの家族法訴訟において州裁判所によって再検討される場合があります。ここで注意しなくてはならないのが、扶養宣誓供述書に基づく金銭的義務と、離婚後の扶養手当・慰謝料とは異なるということです。扶養手当についてはこちらの記事をご覧ください。つまり、場合によっては、扶養宣誓供述書下の金銭的支払いとは別に慰謝料の支払いが必要になるかもしれないのです。ほとんどの州では、受取人が再婚すると、扶養手当の義務は終了します。このような場合、移民申請者は連邦地方裁判所に別の訴訟を提起することによって扶養手当の継続を主張することが可能です。連邦法(8 U.S.C. 1183a (c))によって、訴訟がどこ(州または連邦裁判所のどちらでも)で提起されたかにかかわらず、訴訟相手からの弁護費、裁判費等の回収を容認しています。

正確には、州及び連邦政府機関にも、スポンサーに対する金銭的義務を執行する権限が与えられています。なお、これは実際にはほとんど行われることはなく、名目だけの権限でしたが、2019年にトランプ政権から圧力がかけられたため、政府当局も権限の執行に取りかかりました。さらに、移民申請者が救急医療サービスを利用した場合は、病院などの医療提供者からスポンサーに対して請求されることも理論上可能です。

扶養宣誓供述書のコピーを手に入れるにはどうしたら良いか

扶養宣誓供述書のコピーは、移民申請者の「Aファイル」の一部として米国移民局によって管理されています。情報公開法に基づき、スポンサーまたは移民当人は当局に要求してコピーを取得することが可能です。しかし、コピーを入手するのに手間や時間がかかる場合が稀にあります。そのような場合は、移民申請者が家族ベースグリーンカードの申請を行ったという事実を証拠に、扶養宣誓供述書が存在するということを裁判所で説得できれば早く手に入れることが可能です。

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著者:ダニエル・ジョセフ(ジョー)ジョーンズ
ワシントンD.C.とニューヨークに拠点を持つジョーンズ法律事務所の代表弁護士。米国移民法、国際親族案件、国際ビジネス案件を中心に活動しています。日本の大手企業や国際法律事務所で国際法務に従事した経験があり、日本語も堪能。お気軽にご相談ください