アスリートの方は観光ビザ、また、場合によってはビザ無しでもアメリカに来ることができます。報酬を得たり、長期間の活動のために渡米するアスリートの多くは、P-1Aアスリートビザや、O-1特別技能保持者ビザの取得から始めます。P-1Aビザは、一般的に要求される能力が低いため取得しやすく、O-1ビザは単にスポーツをするだけではなく、アメリカでの幅広い活動が考慮されるという点で有利です。永住権(グリーンカード)は多くの場合に取得可能ですが、数カ月(場合によっては数年間)かかるので、ほとんどの人は非移民ビザから初めて、後でグリーンカードの取得を目指します。これらのビザについては、それぞれ以下に詳しく説明されています。
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観光ビザ
アスリートには、競技を目的としたBビザやESTA(ビザ免除プログラム)での渡米が認められることがあります。
- アマチュアのスポーツ選手は、イベントの報酬を受け取らない限りB-2ビザまたはESTAを使用することができます(報酬の受け取りは認められていないが、経費の払い戻しは認められている)
- プロのアスリートは、イベント報酬が賞金のみの場合にB-1ビザまたはESTAの使用が認められています
- チームに所属するプロのアスリートは、チームが海外に拠点を置き、アスリートが海外で報酬を得ており、チームが国際リーグに所属しているか、またその活動が国際的なものである場合にB-1ビザまたはESTAの使用が認められています
- また、国務省は、プロチームに挑戦するアマチュアのホッケー選手や外国の雇用者に雇われている馬術競技者にもB-1ビザを許可する規則を設けています
上記のオプションが可能な場合は、手続き上、最も簡単な渡米方法となります。Bビザの申請は国務省が行い、通常は数週間で取得できますが、PビザとOビザは国務省がビザを発行する前に、雇用主の請願書に基づいて移民局(USCIS)が行う、より時間のかかる初期審査が必要になります。
国際的に認知されたスポーツ選手やチームのためのP-1Aビザ
このビザは、アメリカのチームで働くために渡米するアスリートや、特定の大会のためにアメリカを訪れるアスリートやチームに利用可能です。P-1Aビザを取得するには、アスリートやチームが「国際的に認められた、レベルの高いパフォーマンス」を行い、「著名な名声を持つスポーツ競技会に参加する」ために渡米することが条件となっています。さらに、その大会は、「国際的な評価を得ている選手やチームの参加を必要とするもの」でなくてはなりません。の基準を満たしていることを証明するために、以下の種類の証拠のうち少なくとも2つを移民局に提出する必要があります。
- アメリカの主要スポーツリーグの前シーズンに相当程度参加していたことを示す証拠
- 国代表のチームとして国際大会に参加したことを証明するもの
- アメリカの大学のインカレで、過去のシーズンに相当程度参加していたことを証明するもの
- 競技者またはチームがどのように国際的に認められているかを詳細に説明した、スポーツの総括団体の役員からの書面による声明
- スポーツメディアのメンバーまたはスポーツ界の著名な専門家による、選手またはチームが国際的にどのように評価されているかを詳細に説明した書面
- スポーツに国際的なランキングがある場合は、選手またはチームがランク付けされたことを示す証拠
- 競技者またはチームが、スポーツにおいて重要な名誉または賞を受賞したことを示す証拠
- 高額の給与やその他の報酬がある証拠
その他のアスリートのためのP-1ビザ
国際的に認知されていないスポーツ選手であっても、以下の3つのカテゴリーのいずれかに該当すれば、P-1Aビザの取得が可能です。
- 6つ以上のプロチームで構成される協会に加盟しているアメリカのチーム、または提携しているマイナーリーグのチームに雇用されている場合
- アメリカのアマチュアチームまたはフランチャイズのうち、少なくとも15チームで構成される外国の協会のメンバーで、その外国におけるスポーツのパフォーマンスが最高レベルであり、そのメンバーシップによってNCAAのスポーツをプレーする資格が無く、その個人がメジャーリーグまたはマイナーリーグにドラフトされている場合
- アイススケートの演劇作品への出演をする場合
O-1特別技能保持者ビザ
O-1ビザ、スポーツをはじめとする様々な分野で並外れた能力を持つ人のためのビザです。P-1Aビザに比べて、特定の雇用主や競技に縛られないため、自由度が高く、申請者が参加する競技やリーグについての審査もそれほど厳しくありません。しかし、これらのビザはトップレベルのアスリートのためのものであり、P-1Aビザよりも取得が難しい場合が多いです。
スポーツの分野では、O-1申請者は国内または国際的な賞賛を受けていることが必要であり、これは国際的に認められた主要な賞(世界選手権など)を受賞しているか、または以下のうち少なくとも3つの条件を満たすことで証明できます。
- 国内または国際的に認知されている、各分野における優秀なアワードや賞を受賞していること
- 各分野の国内または国際的な専門家によって判断された、入会のために優れた業績を必要とする団体の会員であること
- 専門誌や主要な業界誌、主要なメディアに掲載された、該当分野での申請者のスポーツに関する記事やコラムがあること
- 各分野または関連分野においての他社の作品を審査するためのパネルまたは個人での審査への参加経験があること
- 優れた評価を得ている組織や事業所において、重要または不可欠な役割を担っていること
- 高額の給与やその他の報酬を受けていること
P-1AおよびO-1アドバイザリーオピニオン
特定のスポーツ(バスケットボール、馬術、フィギュアスケート、モータースポーツ、ポロ、ラグビー、スケートボード、スケート、サッカー、レスリングを含む)のP-1及びO-1申請者は、アメリカの労働団体またはスポーツ連盟から、申請者がアメリカの労働者に与える潜在的な影響とメリットに関しての意見書(アドバイザリーオピニオン)を提出する必要があります。
グリーンカード
アメリカでの長期滞在を希望するスポーツ選手は、下記の方法で永住権を取得することができます。
- EB-1A特別技能保持者グリーンカードは、O-1ビザと同様に特別な能力があることを証明する必要がありますが、承認のハードルが高くなります。
- EB-2 National Interest Waiver(国益免除)グリーンカードは、申請者の仕事やパフォーマンスの内容がアメリカの国益になることを証明しなくてはなりませんが、この定義は広く解釈することが可能です。つまり、スポーツの実力に関わらず、アメリカでのスポーツの発展に深く関わっているアスリートにとっては、この方法でグリーンカードを取得することが有用な選択肢となる可能性があります。
- EB-3技能労働者グリーンカードは、EB-1AやEB-2の要件を満たさないアスリートのための代替策となります。これには、アメリカの雇用主によりスポンサーシップが必要であり、また、その仕事に適任のアメリカ人応募者がいないことを確認するための厳格な雇用プロセスが必要となります。
- アメリカ市民・永住者との結婚など、家族のつながりを通してグリーンカードを取得することも可能です。
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著者:ダニエル・ジョセフ(ジョー)ジョーンズ
ワシントンD.C.とニューヨークに拠点を持つジョーンズ法律事務所の代表弁護士。米国移民法、国際親族案件、国際ビジネス案件を中心に活動しています。日本の大手企業や国際法律事務所で国際法務に従事した経験があり、日本語も堪能。お気軽にご相談ください。