米国で事業を設立する際に考慮するべき法的事項

米国で会社を立ち上げるのは骨が折れる様な仕事です。法的な観点から言うと、最初の設立の時に気をつけていれば、後に事業の生存率を大いに上げる事ができます。

当事務所は新事業設立、商標登録、企業文書の作成についての豊富な知識や経験を持っています。ご不明点・ご質問等がございましたら、ご遠慮なく当事務所にご連絡ください

会社・事業名の選択とブランディング

新しく会社を立ち上げる際は、州ごとのビジネス登録データベースと商標データベース、又はインターネット検索等を通して、会社名とブランドが他の既存の会社・事業と重複していないか確かめる事が重要です。同じ業界の中で、他の既存の会社・事業に類似した名前またはブランドを使用すると、その会社の商標侵害になる可能性が高くなります。

海外で生産又は販売を考えている会社の場合は、海外でも商標登録をする事が必要な場合もあります。アメリカでは、商標を使う権利は原則として「最初に商標を使った者」に付与されますが、一部の国(中国、日本等)では「最初に商標を登録した者」が権利を持つことになりますので、外国企業の名前とブランドを自分のものとして国内で商標登録する者が存在し、海外企業がその国で製品を製造販売しようと商標登録を求めると、名前が重複している為問題になります。

事業形態の選択

法的観点から言うと、最も簡単な方法は会社・事業を個人的に立ち上げることです。会社・事業の所有者が1人だけの場合、これは個人事業(Sole Proprietor)と言われ、複数の所有者がいる場合は組合(Partnership)と言われます。もっと表立った会社構造に関して言うと、株式会社(Corporation)と有限責任会社(Limited Liability Company)の二種類があります。

ここでの重要な考慮事項は、

  1. オーナーの責任―個人事業及び組合はどちらも「無制限」の責任があり、つまり、所有者は事業に対するいかなる請求についての完全に個人的な責任を負う事になるのです。組合の場合は共同責任であり、全ての共同所有者が責任に問われます。つまり、どの共同所有者も事業に対するいかなる請求について、全額支払いの義務で訴えられる事もあり得るのです。
  2. 第三者による投資の必要性―外部の投資家を探したり、株式を公開する予定のある様な野心的なスタートアップ事業の場合は、株式会社としての事業形態が必要になります。というのも、特にベンチャーキャピタル投資家は、投資先の会社・事業構造を見て投資の判断をする事が多いからです。
  3. 税金―個人事業や組合は独自で納税は行いません。利益と損失は所有者個人の納税申告書に直接「パススルー」されます。株式会社は通常、”C corporation” として法人税を払いますが、場合によっては“S corporation”として扱われ、他の有益な要素に加え、パススルーステータスを得る事ができます。有限責任会社の場合は原則として「パススルー」企業となりますが、“S corporation”又は”C corporation”としての課税を選択することもでき、柔軟性があります。

登録する州の選択

事業に法人が必要な場合は、事業登録をする州を選ぶ必要があります。

最初の登録については、ほとんどの場合には米国の州又は管轄区域をどれでも選ぶ事ができます。事業は定期的に業務を行う全ての州(例えば、事務所又はその他の施設の所在州、及び正社員の駐在州等)で登録する必要があります。したがって、事業の物理的な所在地のある州で登録するのが一番簡単な方法と言えるでしょう。

しかし場合によっては、所在地以外の州を選ぶ必要があるときもあります。第三者の投資や株式上場を目的としている事業にとって最も人気のある州はデラウェア州です。特定の目的で他の州が好まれる事もあります。例えば、税率が低い事や投資家の匿名性等の理由からフロリダ州やネバダ州が好まれます。

事務手続き

個人事業主には法的な文書の提出は特に要求されませんが、所有者が商号(DBA)や雇用主番号(EIN)を取得したい場合は事務手続きが必要になります。

所有者が1人しかいない有限責任会社の場合は、簡易的な事務手続きのみで用が足りる事が多いのですが、会社と社員の責任を明確に区別する為には事業と所有者の法的ステータスを区別する事が重要です。つまり、事業の会計帳簿と記録を慎重に保管し、所有者と事業間の金銭取引を細かく記録し、所有者が必ず事業の名前を使って業務関連の文書に署名する事などが必要になります。有限責任会社や複数の所有者によって管理されている株式会社などの場合は、将来的な法的紛争を避ける為にも、綿密に書かれた合意書を作成する事が重要です。

ビザ

アメリカの在留資格がなければ、ビザも検討しなければなりません。起業家向けのグリーンカード(永住権)がありますが、申請には時間がかかるため、より簡単に取得できるE-2投資家ビザ等の条件を把握する必要があります。

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