レストランでは、アメリカで働く資格のある労働者を見つけるのに苦労することがよくあります。アメリカには、レストラン業界の労働者を対象とした特定のビザはありませんが、レストラン経営者が労働者のビザをスポンサーする方法はいくつかあります。自己スポンサーでビザを取得しようとしているレストラン経営者の方は、こちらの記事「起業家としてグリーンカードを取得する方法」をご参照下さい。
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EB-3 グリーンカード
EB-3ステータスを使えば、労働者がアメリカに無期限に滞在し、最終的に市民権を申請することができますが、取得には多大な費用と時間がかかってしまいます。
まず、雇用主はアメリカ労働省に申請して、それぞれの職種によって定められている最低賃金の承認を得たのち、求人広告を出し、現地の応募者の面接を行わなくてはいけません。最低賃金の承認と求人広告を出すまでの段階だけでも、数カ月はかかります。これらの手順を全て行った上で、適切な候補者が見つからなかった場合にのみ、EB-3を使って海外からの従業員をスポンサーすることが可能です。しかし、手続きには通常1年以上かかり、申請者の国籍やUSCISのバックログ(溜まっている未処理のアプリケーション)によっては何年もかかる場合があります。したがって、EB-3ビザは以下で説明するような他の種類のビザなどで既にアメリカに滞在している労働者にのみ現実的な選択肢でしょう。
E-2投資駐在員ビザ
多くの外国の投資家は、アメリカの企業・ビジネスに投資することで、E-2投資駐在員ビザを取得することができます。これは、投資家の母国から管理職の従業員のビザをスポンサーするためにも使用できます。共同経営者はそれぞれビザを取得する資格があり、追加で管理職の従業員たちのビザもスポンサーも可能な場合があります。E-2ビザは通常、2年間の期限で発行され、無期限に更新し続けることができます。
しかし、このビザの大きな欠点は、特定の国の国民に限定されていることです。ほとんどの先進国が対象になってはいますが、中国本土、インド、ブラジル、メキシコなどの大規模な発展途上国の国民は取得できないとされています。
短期研修ビザ
多くの企業が新卒従業員を1年以内の研修契約でレストランに派遣しています。これらのプログラムに参加できる研修生は、J-1ビザを使えばアメリカ国内で就労することができます。
また、レストランによっては、ウォルト・ディズニーワールドのエプコットで広く利用されていることから由来する「ディズニービザ」や「エプコットビザ」などとも呼ばれるQ-1ビザを利用することもできます。このビザは、一般の人々に文化交流の機会を提供する雇用主のためのもので、期間は最長15カ月です。
これらのビザの大きな欠点は、一般的に延長ができないことであり、また、ビザの使用目的によっては、遂行できる業務の内容にも制限があります。
H-2B短期就労ビザ
一時的な労働力を必要とするレストランでは、H-2Bビザを利用することができます。一番典型的な例は、リゾートになるレストランで季節的な需要に対応するために1年のうち数カ月だけ人手が必要になる場合です。
H-2Bビザでは、1年に10カ月までの季節労働者、1年までの継続的または一時的なピーク期の労働者、3年までの1回限りの労働者のニーズに合わせて取得することができます。いずれの場合も、労働者の契約期間は、雇用主が説明した一時的な必要性と一致していなければならず、雇用主が説明した内容が誠実で善意に基づいたものであることを保証するための制限が設けられています。
H-2Bビザの利用は、特定の国にのみ限定されています。ほとんどの先進国と中南米諸国は対象となりますが、アジア(中国本土とインド含む)とアフリカなどの多くの発展途上国は対象外となります。
また、H-2Bビザには、年間6万6千件(半年ごとに3万3千件)の上限が設けられているため、待ち時間が長くかかることがあります。ただし、H-2bビザの保有者は、転職や滞在期間の延長が可能で、上限にはカウントされません。
O-1 特殊技能保持者ビザ
著名なシェフや料理人などは、特殊能力保持者としてO-1ビザを取得することができます。これには、メディアでの報道や受賞歴、その他の信頼できる第三者の情報源に基づいて、その分野でトップの地位にあることを示す必要があります。O-1ビザは、通常2年間の期限付きで無期限に更新することができるため、条件を満たす人にとっては魅力的な選択肢となります。
P-3芸能ビザ
固有文化を促進するとみなされる料理芸術家であれば、アメリカでパフォーマンスを行うための特別なビザを取得できる可能性があります。このビザは主に音楽家などのパフォーミング・アーティストを対象としていますが、厳密にいえば、文化的にユニークなプログラムに参加するあらゆるアーティストやエンターテイナーも対象となります。このビザに関しての応募資格は、基本的にアメリカ移民局の裁量によって決められます。
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著者:ダニエル・ジョセフ(ジョー)ジョーンズ
ワシントンD.C.とニューヨークに拠点を持つジョーンズ法律事務所の代表弁護士。米国移民法、国際親族案件、国際ビジネス案件を中心に活動しています。日本の大手企業や国際法律事務所で国際法務に従事した経験があり、日本語も堪能。お気軽にご相談ください。